韓国ドラマ 誰もいない森の奥で木は音もなく倒れる (感想)

Netflix

おすすめ度:92%
2つのホテル度:100%
カエル度:100%
原題:아무도 없는 숲속에서 / The Frog (全8話)

誰もいない森の奥で木は音もなく倒れるレビュー考察感想 ネタバレ

ある日突然やって来た「客」が終わりの始まりだった…。2024年のサスペンス・スリラー作品。

あらすじ・キャスト

仕事をやめ、静かな森の中で貸別荘を経営しているヨンハ(キム・ユンソクさん)。
ある日、ヨンハは子供を連れた意味ありげな女性ソンア(コ・ミンシさん)を宿泊客として受け入れる。
しかし彼女が帰った直後、ヨンハは何か不吉なものを感じるのだった。
一方、20年前、ホテルを営業していたサンジュン(ユン・ゲサンさん)は、恐ろしい客を宿泊させてしまってから、彼の人生は激変する。
そんな時を超えて、2つの事件を担当したのは刑事ボミン(イ・ジョンウンさん)だったが…。

感想

総合的には大変面白かった!
2001年にレイクビュー・モーテルという宿泊施設で起こった事件と、2021年の貸別荘で起こった事件、この2つの事件が微妙に"交差”する物語。
映像とロケーションが特に美しく、シーンがまるで計算されたようなコンテンポラリーなショットで全編撮影されていて、大変印象に残りました。使われていた音楽も良かった。
クライムスリラー物ですが、それほどグロテスクな描写はなかったと思いました。
気になる点もキャラについての考察それなりにありましたが(後述します)、考察できるような人物も多く、私は好きな作品でした。
序盤の掴みが本当に良くて、一体この後物語がどう進んで行くのだろう?という期待と不安を抱かせてくる流れは本当に最高。

ただ一方で、ユン・ゲサンさん演じるサンジュン経営のモーテルと、キム・ユンソクさん演じるヨンハのペンション、この2001年と2021年の時代/事件の“繋がり"がわかりにくい点は今作の特大マイナスポイントだと思います。
レイクビュー・モーテルの内装などで、その「過去」を感じさせてはいます。しかし、今でも(2021年)そのレトロスタイルで存在しているホテルだと思わせられたり(=つまり2つの事件が同時進行と勘違い)。
はたまた、ヨンハの過去がサンジュンなのかと一瞬見るものを迷わせられたり…。
観ていて混乱という程では無くとも、多少イラつかせられる点(無駄に思考させられるという意味で)は単純に良くなかったと思えました。
このミスリードを誘う流れは制作側では恐らく意図的ではないでしょうから、もう少し交通整理的な編集をお願いしたかったです。
というのも、そう勘違いさせられる問題(?)の大きな原因は、女性警察官のボミンの存在があるから。
ボミンだけが、今と昔で2人の女優さんで演じられているんですよね。
そこが綺麗に頭の中で線引きされてからは、全く問題ないのですが…。序盤はなかなか視聴していて、ハッキリしないように感じました。
あと、ちょっと無駄なキャラが多かったようにも思えたような。内容的には全6話でも良かったようには感じました。

俳優陣の演技ですが、特にコ・ミンシさんが想像以上にキレキレの役を演じていらっしゃったので、本当にかっこよかった!
今作のミンシさんの演技は間違いなく見所の一つだと思います。
衣装もハイブランドが多用されていましたが、とってもキャラと雰囲気、そしてミンシさんに似合っておられて、美しかったです。
ストーリーは後半ちょっとキャラ的に予定調和的に進んだ感じになりましたが、視聴しやすい流れのドラマでした。
気になった方は是非観て頂きたいです。

ゆるいネタバレありの感想

Netflix Koreaインスタグラムより

2001年:レイクビュー・モーテル
お金に苦労した半生、やっと自分の”仕事場”を手に入れたサンジュン。その名前の通り、湖が見渡せる静かなモーテルのオーナーとなります。
こじんまりとしたホテルは部屋数も客数もあまり多くなく、サンジュンと妻とでフロント係や清掃など全てを受け持っている様子。
ある強い雨の夕刻、サンジュンはモーテル近くにガソリン切れで停車している1台の車を見かけます。
純粋な親切心と少しのセールス心もあったのでしょう、サンジュンは声をかけたのでした。帽子を目深に被った男サンチョルに。
男に対してフロント係でもあるサンジュンは、サービスで眺めの良いスイートルームにアップグレードして宿泊させます。
レイクビュー・モーテル開業3周年の年でした。
しかしこの夜、サンジュン自ら招いてしまったこの男性客が、全ての「終わり」の始まりだったのです…。
翌朝、夜間担当のサンジュンと交代するため妻がモーテルにやってきました。妻が清掃のためか、スイートルームに入って見た光景はまさに地獄。
そう、実はこの男性客は凶悪な連続殺人犯。
この小さなモーテルのスイートルームもたった一夜にして、”殺人現場”になってしまったのでした。
その後のレイクビュー・モーテルは、とても営業を続けられる状態ではありません。
加えてサンジュンらの家族は意味のない誹謗中傷から、精神的・金銭的な問題もあってて何の罪もないこの善良な家族は、まさに崩壊してしまったのでした。

誰もいない森の奥で木は音もなく倒れる ネトフリ 韓国ドラマ 感想考察あらすじネタバレ

2021年:貸別荘
ソウルで役職のある仕事から離れ、余命宣告された妻と共に空気の良い静かな森の中で貸別荘業を始めたヨンハ。
建物は綺麗に整えられ、屋外にプールもあり、静かでセンスの良い貸別荘です。
妻の亡き後も、ヨンハは1人でこの場所で細々とこのペンション経営を行っていますが、それほどゲストがいるわけではない様子。
しかしそんなある日、子供連れの1人の女性客がヨンハの元にやってきます。
本当は近隣の別の施設に泊まる予定でしたが、エアコン故障のためにヨンハの所で受け入れてくれと頼まれたのでした。
他に予約入っていないペンション、ヨンハは喜んでこの女性と子供の客を迎え入れたのです。
これが全ての「終わり」の始まりとは知らずに…。
翌日、ヨンハは妙に片付いた女性と子供が去った後の部屋に入りますが、言いようのない違和感をその”部屋”に覚えます。1人静かな恐怖に襲われるヨンハ。
あの女は、子供をこの部屋で”消した”のではないか…?
恐ろしい疑惑が頭から離れません。
警察にこの件を話そうと考えもしますが、ヨンハは「考えない」という決断をここで取ります。
この件は「知りようがなかった」「何も気づかなかった」こととし、ヨンハは緊張感を抱きながらも1人黙々と部屋を再び”全て”綺麗にします。
まるでなぜか全く関係ないはずのヨンハが、後ろめたい事件の”証拠を隠滅”したような形で…。
警察に何か勘付かれるのではないか?そんな警戒心を持ってヨンハは過ごしながらも、いつの間にか時間は経過。
やっぱり”あの件”は単なる思い過ごしだったのかもしれない…。
いつの間にかそんなことも忘れ、彼はいつも通りの平穏な暮らしを再び取り戻していたのでした。
あの女が、また1人でやって来るまでは。

気になった点と考察

誰もいない森の奥で木は音もなく倒れるレビュー The Frog 考察感想 ネタバレあらすじ
誰もいない森の奥で木は音もなく倒れる Netflix 韓国ドラマ 感想 考察 あらすじネタバレ

 

個人的に面白いと思った点などを考察と共に書いてみます。(ストーリー順ではないです)
ソンア
後半にかけてサイコパスから完全にクレイジー化してしまった暴走描写で、深みに欠けて残念には思いました。ただ、面白かった描写もたくさんありました。
彼女の中で絶対的な「頼みの綱」がいつも存在しているように見えました。
まずは、彼女の父親です。
彼女を守ってくれる存在、その後ろ盾があってこそのソンアの凶暴化に思えました。
偶然、幸か不幸か、貸別荘先のヨンハが“何故か”彼女の犯罪を隠蔽してくれたところで、
彼女の中でヨンハに対して妙な信頼…仲間のような感情が生まれてしまったのだと思えました。
ヨンハが彼女から離れるほど、「おじさん!!!(絶叫)」と彼を呼び出します。
彼女がピンチに陥るほど、ヨンハを何故か頼りました。
例えヨンハが彼女のことを殺したいほどでも…。
この彼女の“弱さ”みたいな描写は終始興味深いなと思ったところです。
実の父親との間に何かコンプレックスみたいなものがある設定のキャラなのかもしれないな、と考察できそうでしたが。

ヨンハ
何故彼は最初に「黙って」しまったのか?
個人的には最悪なムーブだと思っていましたし、そもそも彼はあの場所にやたら固執したのか視聴しながらずっと考えていました。
ソンアがペンションを売ってくれと要求していましたが、あんなサイコパスが寄り付いてくるなら絶対あの場所から逃げ出したい気持ちになりそうなもの。
これは私の勝手な考察ですが、亡くなったヨンハの妻はあの辺りに埋葬されているのかもしれない、とも思えました。
何なら当初、私はヨンハは実は(何らかの理由で)病気の妻を殺したのかも?とも考えてもいました。
それならば、彼があの場所から離れたくない、無駄な警察沙汰を避けたい気持ちは理解できるからです。
ただ、恐らくは(素直に考えて)妻との思い出がいっぱいの場所を手放したくなかったのだと思います。
それぐらい彼はあそこの暮らしを続けたかった…。
だからこそでしょう、事件後もあの場所でみんなで住んでいた描写は良かったです。

後半、ヨンハはレイクビューホテルの息子と接触し、ここでも犯人を隠蔽します。
このエピソード自体は、ドラマとして何だか蛇足だなと私は思ったりもしました。(すみません)
ですが、一方でこのヨンハのような存在もまた「カエル」にとって存在するのだ、という不思議な後ろ盾のようなものを感じて面白く思えました。
家族がボロボロになってしまった被害者の”カエル”は、この場合はギホです。同じカエルだったヨンハがギホを”何となく”助けたのです。
このドラマの主題として「不運なカエル」という語り口でした。このカエルに気付く者もいるのだという意味合いにも私は感じました。
長い日本語タイトルが、まさに哲学的な禅問答ですが、その音に気付く者もまた存在する(主にはボミンがその象徴)、そのような”不条理”の不幸の一方通行だけの物語にはなってはいなかったと思えました。

刑事ソンテ
彼は女性軽視をしていることがわかるキャラとして描かれているシーンが多く、興味深かった。
新所長ボミンが最初に署に寄った際も一瞥して「(適当にあしらってもよい)ババア」的な態度を示し、その後ボミンが所長と分かってからも面白くなさそうに見えました。
また貸別荘でトラブルがあった際、あからさまにソンア(コ・ミンシさん)に”女性として”興味を持つ視線を完璧に描いていました。
彼がヨンハに向かってソンアを”守ろうと”して吐いたセリフはまるでブーメランのようで、最後まで彼の存在自体が皮肉になっていました。
ボミンからもソンアからも、彼の”意図”は丸見えで逆に彼女たちから”あしらわれて”いたソンテ。
最終的に彼はソンアを見くびって、その軽視していた女性にウザいという判断だけで殺されてしまいますが…。
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ということで、画面の色使いやセットの美しさ、静謐さとサイコパスさが今作によく合っていました。
内容的にも映像的にも、ネットフリックス作品らしさが強く出ているなと感じました。私はとても楽しめた作品でした。
ただもう少し内容を圧縮できたのではと思ったのと、過去と今の2つの事件の繋げ方が少々不味い感じはしました。(偉そうにすみません)
コ・ミンシさんの演技を観るだけでも価値はあると思います、好き嫌いが別れる作品かもしれませんが、個人的にはおすすめです。

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