韓国映画「スンブ: 二人の棋士」の作品情報・あらすじ・感想

ヒューマン

今週は「ウンジュンとサンヨン」を見てたんだけど、時間が足りずまだ見終わらないので…、先に少し前に見てたこちらの映画の感想を。

イ・ビョンホンはやっぱり上手かったし、ユ・アインの才能はもったいないよ~!と切に思った映画だった。

作品情報

  • 邦題:スンブ: 二人の棋士
  • 原題:승부
  • 英題:The Match
  • 公開:2025年
  • 上映時間:115分
  • 日本国内配信:Netflix(2025.9現在)

予告編

あらすじ

1980年代、囲碁世界一を決める応昌期杯で勝利した韓国のチョ・フニョン(イ・ビョンホン)は、韓国の囲碁の地位を高めたことを認められ文化勲章を受章する。

囲碁のイベントで地方へ行ったフニョンは、囲碁の新童と呼ばれる少年チャンホ(キム・ガンフン)と出会う。彼の才能を見抜いたフニョンは、やがてチャンホを弟子にすることに。

フニョンの自宅に住み込んで、囲碁の基礎から勝負に挑む姿勢までを学び、着実に腕を上げていくチャンホ(ユ・アイン)。自分だけの戦い方を探求するチャンホは、やがて師匠と衝突し…

囲碁界の天才少年と、彼の才能を見出し育てた師匠との、成長と葛藤を描いた囲碁映画です。

評価(momoruruが勝手に採点♪)

momoruru

総合評価 89点

1980年代が舞台の、実在する棋士たちの人生を描いた囲碁映画。
「弟子が最終的に師匠に勝った」という流れの映画かと思って見ていたら、実はそこからが始まりだったっていう展開が面白かった。
7:3分けのイ・ビョンホンの演技も良かったけど、ユ・アインの没入感のある演技はやっぱり良かったなー!

感想

見どころは、名優たちが表現する葛藤

初めて見ました囲碁の映画!

映画とは関係ないんだけど…。
幼い頃、私の実家の客間にはいつも、足の付いたかなり分厚くて小さな机(碁盤)が鎮座していて、その近くには良く磨かれた木製の丸みのある入れ物(碁笥)が2つ置いてあってね。入れ物の中には、白と黒のスベスベの石がたくさん入ってた。

「なくなると困るから石には触らないでね」と言われてたけど、幼い私は親の目を盗んでこっそり触ったりもしていて(コラw)、 真夏でもその石はいつも、ひんやりと冷たくて心地良かった。なんだかすごく特別な物のように思えた。

その白黒の石が「囲碁」の碁石だと知ったのは、だいぶ大きくなってからのこと。なぜなら、我が家には囲碁を打てる人が誰もいなかったので、それが何なのか私には分からなかったw 誰も使わない碁盤をどうして客間に飾ってたのかは今も不明だけど、曾祖父のものだったのかな~?

ハイ。というのが囲碁に関して私が持ってるエピソードの全てで…正直、囲碁のことはさっぱり分からない。あの石が冷たいんだってことくらいしか。

そんな私でも全く問題なく楽しめたこちらの囲碁映画。囲碁?なんだそれ分からん!という方でも安心して見れるはず~。

この映画のテーマはきっと「師弟愛」。師匠として、弟子として、お互いに複雑な感情を抱えながらも、勝負の場ではプロとして真っ向勝負する、師匠と弟子の愛が熱かった~!!

ストーリーは、1980年代に韓国で初めて世界を制した棋士チョ・フニョンが、囲碁の天才少年イ・チャンホを育て上げていく物語。フニョンはチャンホ少年を弟子として自宅に迎え入れて、囲碁を基礎から教え、チャンホはやがて自分のライバルにまで成長するんだけど、2人の間に生まれる複雑な葛藤を丁寧に描いてるのが印象的だった。

ちなみにこちら、実在する(しかも今でも現役の!)囲碁棋士2人を描いた実話がベースの映画なので(もちろん脚色はあるそうです)人物描写はかなりリアル~。( ↓ 左がチョ・フニョン氏です)

自分だけの勝負スタイルを師匠に否定されて伸び悩む弟子チャンホの葛藤や、自分を凌ぐほどの棋士に成長した弟子を持つ師匠フニョンの苦悩も見ごたえがあるんだけど、それを臨場感たっぷりに表現していく主演のイ・ビョンホンとユ・アインの演技対決にも一見の価値あり。

そもそもの演技スタイルがかなり違う2人だと思うんだけど、師匠フニョンは囲碁では攻撃的で性格も鋭い印象なのに対して、弟子チャンホは囲碁では緻密な計算と守りを重視するスタイルで性格は寡黙で無表情。師匠フニョンと弟子チャンホのキャラクターの対比が際立っていたのもあって、二人の演じ分けには思わず引き込まれちゃうほど。

イ・ビョンホンが演じる王者フニョンの焦りや苛立ちも当然のように良かったけど、個人的には、弟子チャンホを演じるユ・アインが凄かった。感情を表には出さない演技に、圧倒的な存在感があるんだよなあ。

考えてみたらチャンホってびっくりするくらいセリフが少ないんだよね。あんまり言葉を発しないし、何を考えているのか分からないくらい表情も乏しいんだけど、ちょっとした目つきや動きだけで、彼の中にある不安定な感情や、そのもっと奥にある確固とした信念が伝わって来る。

いつも無表情に見えるチャンホにも、感情がぎゅうぎゅうに詰まってるんだろうなってことが伝わってくる演技というのかな。ユ・アインさすがだなあ…って思わずにはいられない~。映画「声もなく」の演技に通じるものがあった気がする。

そう思えば思うほど、ユ・アインの起こした事件は残念なわけで…。ご存じの方も多いと思うんだけど、ユ・アインは2023年に薬物使用容疑で起訴されていて、今は俳優活動はしていないのよね(2025年7月に懲役1年に執行猶予2年で罰金200万ウォンで判決が確定)。

この映画も撮影はなんと2020年~2021年だったけど、ユ・アインの事件のために公開が延期になってて、遂に2025年に公開された作品なんです…。随分長いこと寝かされてたのね。

momoruru

この続きはネタバレありますのでご注意を~

再起する師匠はカッコイイ!

私は師匠が凄いと思ったなあ。
親子関係でもそうだけど、一生懸命に育ててきた子供が、親を踏み越えて行く瞬間って多分あると思うのよ。その時にどんな気持ちで見送れるのかで、その人の人間性が分かるのかも。

この映画の場合は、師匠が引退を考えるよりもずっと早いタイミングで弟子に追い越されちゃうから、師匠は一度は猛烈に拗ねて凹んで醜態を晒すわけなんだけど、そこから師弟対決を楽しめるほどのメンタルに持っていけるところは凄いなーと。

自分が弟子の成功を喜んであげられないせいで、買っても笑うことすらできない弟子が可哀相だとは言いつつ、それでも現実と向き合えなかった時期に、古い囲碁仲間から「まだ先生としては終わってないぞ、チャンホが強くなるために刺激を与えてやれ」って言われたあたりからフニョンは変わっていくんだけど(この部分の描写には不足感があって、フニョンの変化の理由についてはやや分かりづらい)。ここで変われる人間って実は少ないと思う。

普通なら老いや才能を言い訳にして惨めに諦めそうなものを、再起して学び直して勝ち上がって、再び対決の席に着くって、なんてカッコイイ師匠なんだ!って思っちゃった。こんな師匠、弟子は誇りに思うはず!

ふと、私もああいう大人でありたいな、なんてと思えるような、ちょっとだけ背筋が伸びる映画だったな。家庭や職場で人生の後輩たちを育てているような一定年齢層以上の人には感じるところのある作品かもしれないね。

momoruru

序盤の対局で、酸素ボンベを吸う中国人棋士の真ん前でタバコを吸うフニョン…危険よ~。

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