おすすめ度:76%
2つの人生度:100%
信念度:100%
原題:옥씨부인전 / The Tale of Lady Ok (全16話)
奴婢としての人生がある日大きく変わる…2024年のロマンス・ヒューマンドラマ。
あらすじ・キャスト
奴婢のクドク(イム・ジヨンさん)は父と共に虐げられながら日々暮らしていた。
クドクはある日ソイン(チュ・ヨンウさん)に出会う。奴婢でありながら知的な彼女にソインは心を奪われる。
しかしソインとの仲を疑われたクドクは激しい拷問を受け、必死に逃げるが…。
感想
特に前半は抜群に面白かったです。後半は個人的にはまとめ方がちょっとボンヤリして来たのと、矛盾を少し残念に思ってしまいましたが、総合的には面白いドラマでした。
時代劇ですが、テンポも良く、時代劇特有の無駄な(?)重厚感もなくてかなり観やすいタッチで描かれており、演出などの工夫を感じたのは特に素晴らしかったところだと思います。
また、主役のクドクを演じるイム・ジヨンさんの力強さが伝わる演技が大変良くて、本当にこのクドクという女性キャラをくっきりと際立たせていて印象に残りました。
ジヨンさんの演技はどの作品でも観る度にものすごく引きつけられるものがあるというか、とにかくカリスマ性のようなものをお持ちの女優さんだなと思います。
奴婢という身分で虐げられて生きてきた女性が何もかも失った時に、あるきっかけで180度異なる人生を歩むことになるストーリーです。
そんな彼女が生きる中で、恋もしますし、”キャリア”もあって…という、現代にも通じる内容なのも良かった。
また一方で、このクドクという女性がマイノリティであるが故に…、という視点が中心に据えられていたのも興味深かったです。
ただ、この”マイノリティ”視点が何となく後半散漫になっている気がして私は少々勿体なさを感じはしました。若干最初に裾野を広げすぎた気もするというか…。
お話では、クドクと恋愛関係になる男性が出てきます。
この役がチュ・ヨンウさんが演じられています。同じ時期にNetflixで『トラウマコード』でも良い役を演じられていたので、いきなりヨンウさんがたくさん画面に出現状態になっていて、余計にインパクトがありました。撮影時期は異なるのでしょうが…。
少しネタバレになりますが、この主演2人がそれぞれ2人の人物を演じる(正確には異なりますが)というギミックが用意されています。
その効果もあって、物語自体が単調になりにくくしてあって面白かったです。
時代劇作品が持つ独特のクドさを感じられないドラマになっていますので、普段敬遠されている方でも比較的視聴しやすいドラマかなと思います。
ただ、ラブストーリーを重視する方は、決してそれが主題にはなっていませんので少々物足りないかもしれません。
ゆるいネタバレありの感想


奴婢のクドク。両班の家で使用人として働き、そして暮らしています。
彼女らが仕える主人の娘ソヘは特に意地が悪く、気に入らないことがあるとクドクを目の敵にするような女性でした。
そんなクドクはいつかこんな暮らしか逃れ、父と2人で海の側で静かに暮すことを夢見るのでした。
ある日クドクはある男性に出会います。その男性こそソイン、そしてあのソヘの縁談相手です。
クドクと会話を交わしたソインは、身分を越えてお互いすぐに惹かれたようでした。
しかしこの知り合ったばかりの2人に、ソヘは出くわしてしまうのでした。ちょうどそれはソヘの縁談が断られたばかりのタイミングに…。
縁談が破談となったのは、クドクがソインを誘惑しているからだと激怒するソヘ。
怒りは収まらず、まさに殺されそうな勢いで父とクドクは激しい暴行を受けるのでした。
クドクは必死に父と共に屋敷を逃げ出すものの、父親と離れ離れになってしまいます。
テヨンとして
クドクは行方不明の父親のこともあって、付近の茶屋で働かせてもらうことに。
そんな時、身分の高いテヨンら一行がやってきます。
クドクにとって、これが運命の出会いになるのでした。
テヨンはクドクと仲良くなり、彼女の暗い事情を察した様子。
不憫なクドクをテヨンは引き取って一緒に家に連れ帰ろうとした頃、何と襲われてクドク以外は皆亡くなってしまうのでした。
クドクが次に目を覚ました時、あの「テヨン」となっていたのです。
・・・と書くと、クドクがこの事故に便乗してテヨンという人物になりすましたと思われるかもしれません。
が、ここには元々の女性、テヨンという人物からクドクに”バトンタッチ”された運命と、そしてまたテヨンという孫や子を失った祖母の考えがあってこそです。
つまり、この”テヨン”は元々は奴婢クドクであるということを知っている家族(祖母)の願いでもあったわけです。
こうして、奴婢クドクは両班の娘テヨンとしての人生を歩み始めます。
結婚とソインと再会
テヨン(クドク)は自分の元で働く奴婢の不可解な死亡事件がきっかけに、外知部(主に弁護士のような仕事)として意識が大きく変わります。
この仕事は、元々テヨンが目指していたものでもありました。まさにクドク課せられた使命なのかもしれません。
また途中あのソインと瓜二つのユンギョムと出会い、ユンギョムの父の後押しもあって、ソインはユンギョムと婚姻することに。しかしこれについても「裏」があったのです。
実はユンギョムは同性愛者だったのですが、時代もあってか家族含めてこの件は誰もしりません。
しかし結婚を”しなければならない”プレッシャーもあり、全ての状況を考えると相手にはテヨンがピッタリだというのです。
テヨンとしても都合が良かったのはその通りで、こうして2人はいわば契約結婚のような見せかけの形を取ることに。
ここでもテヨンは再び外知部として、この職業と深い運命をこのユンギョム家族からもたらされたのでした。
2人の平穏な時間は束の間、この夫ユンギョムも謀反の疑いがかけられ、何と失踪してしまいます。
テヨンは1人家に取り残され、幼い義理の弟と共に家を守ると決意したのでした。
一方、あのクドクが密かに恋をしていたソインと再会することになります。
現在のソインも昔とは異なり、自分の生まれについて父親と長い確執があり、結局家を出て名を変えて作家となり作品を朗読する芸人として生きていたのでした。
思ってもみなかった再会の驚く2人…。
しかしソインはテヨンの180度人生が変わった状況を察し、静かに彼女を支えようと決めたようです。
ソインとテヨン2人の人生が再び交差します。
気になった点
ユンギョムの描き方について
主人公クドクが奴婢という身分制度のため、虐げられて夢や希望も捨てなければならなかった人生から一転。立場が変わったことで、過去の自分のように弱い者を助けるため外知部になり…というある意味サクセスストーリーでもありました。
クドクの人生としてはドラマ内で良く描かれていたと思ったのですが、私が最も気になったのがテヨンが最初に結婚したユンギョムという男性についてです。
彼は県監の息子で同性愛者という、いわゆるマイノリティとして描かれています。
しかし、彼の役柄としての使い方が正直ちょっと単なる都合の良い”駒”になっているような気がして、私はそこが最もうーーーん、と残念に思ってしまいました。
私が真に最もガッカリしたのが、最後にユンギョムがソインに入れ替わって死んでしまうという顛末です。
これは…、結局”マイノリティ”がマジョリティの為に死んでいるじゃねーか!と、思わず画面に向かって突っ込んでしまいました。
(この場合は、同性愛者がいわゆる一般的な異性愛者のために命を落としていますよね?)
ここはユンギョムに対しても、愛する者(いたのかどうか描かれていませんでしたが)もしくは、彼自身が望む状況で幸せに暮らすというお話も一緒に用意すべきだったのが、本来の筋ではないかなあ…と私は個人的にガッカリした次第です。
まずスタート地点でクドクに身分の保証と外知部として踏み出す大きな機会を与えられたのもこのユンギョムがいたからこそ。
しかし、程なくして失踪してしまいます。このあたりのユンギョムの本当の考えや、港でクドクを見たにも関わらず無視したシーンなど、説明がちょっと後から聞いてもいまいち納得できませんでした。
もちろんメインキャラがソインだったのでしょうがないかもしれませんが、せっかくヨンウさんが2役演じられているので、もう少しクドク/テヨンのジヨンさんのミラー演技のように、ソインとユンギョムについても同様に肉付きのある背景を付けて欲しかったです。
そんなこんなで、このユンギョムというキャラが色々な鍵になっていたにも関わらず、都合によって適当で出てきたり、消えたりと適当に使われているキャラになっていて、結末の最も大切な箇所で、ストーリーが主題としている点との矛盾についてそれはどうなのか…と思ってしまいました。
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ということで、前半は文句なく面白いと思ったのですが、後半はややご都合主義のような流れになった気もしないでもない作品かなと思いました。(個人的な感想です)
ただドラマとしては観やすいですし、中だるみなく面白く視聴しました。
ですが今作は主題がが強めに挙げられているタイプのドラマだったのもあって、それならば上述した点も同じ視点で平等に「解決」すべきではないのかなあと思ったりした次第です。
気になった方は是非視聴してみてください。