おすすめ度:68%
映画業界度:100%
プロジェクター度:100%
原題:멜로무비 / Melo Movie (全10話)
映画に深く関わりのある2人が出会い恋に落ちる、しかし5年の空白期間が…?2025年のヒューマン/ラブストーリー。
あらすじ・キャスト
アシスタントとして映画の撮影で忙しく走り回るムビ(パク・ボヨンさん)に一目惚れしたギョム(チェ・ウシクさん)。
映画のセットで再びムビを見つけたギョムは、アピールの甲斐あってついにムビの心を掴むのでした。
しかし、突然ムビの前からギョムは去ってしまいます。何の連絡もなしに…。
そして5年後、映画評論家と映画監督として2人は再会し…?
感想
正直、序盤の4話までが妙に思わせぶりで、どこに話が向かっているのか理解するのが私にとって難しく、観ていて私は最初まあまあイライラしました。
ですがその序盤を抜けると、このドラマが描きたかったことが何となく掴めるというか…。
キャラクター本来の長所・短所が描かれて人物像が次第に観ていてやっと形作られるというか、そのような”良さ”が出ていて後半は率直に良かったです。
特にギョムと兄ジュンの関係性については、興味深く描かれていたと思いました。
とはいえ、総合的にはどこか表面的で上っ面だけのフワフワした描き方だったようにも思えて、肝心な部分は語られず雰囲気に流されたまま…という、少々残念な感じがしたドラマでした。
後半になればなるほど物語が良くなりますので、最初はちょっと辛抱かなと思います。
最初一見やたらテンポが速いように思えるのですが、内容としては非常に説明不足というかある意味スローな始まりだと感じましたので、もし同じように思えた方は是非最初にリタイアせずに観て頂ければと思います。
個人的な気持ちですが、そもそもタイトルの「恋するムービー」というのがまたちょっと問題(?)というか、1,2話の物語の掴みの印象とこのタイトルの雰囲気で完全にムビ&ギョムのラブストーリーが主題なのだ!!と、どうしても無意識に思い込んでいました。少なくとも私は…。
そのせいで、この2人の関係性の違和感などを序盤で感じてしまい、その説明やキャラの魅力の描き足りなさ、そんな様々な部分で私は勝手にイライラしたりしていた訳です。
ですが、このドラマ自体が全10話をかけて描きたかったこととは、決して単なるラブストーリーではなかったというのが、後半に(やっと)明らかになります。
そのあたりの実はラブストーリーだけではないという”匂わせ”が、最初に圧倒的に不足していたので、どの視点でストーリーを捉えるか視聴していて定まらず、序盤はギョムとムビこの主人公2人を私はあまり好きにはなれませんでした。(後半は違いますが…)
不器用でもある2人が出会って恋に落ちるわけですが、今作はどちらかというと恋愛ドラマではなく、家族と自分の関係性を見つめ直して、その「自分の問題」を乗り越えてやっと恋愛に進むことができた、というような(やや)ヒューマン系のストーリーだったと感じました。
私が最も良かったと思ったエピソードは、ギョムと兄ジュン(キム・ジェウクさん)のお話、そしてムビ&母親のお話でした。
次いで恋愛としては、シジュン(イ・ジュニョンさん)&ジュア(チョン・ソニさん)の関係でした。
なので、個人的には主人公であるムビとギョムの恋愛は申し訳ないですが最もつまらない…というとネガティブすぎるかもしれませんが、表面的でフンワリしていて全く深みがない関係性の描き方だなとガッカリした次第です。
ただ、少し書きましたが、ムビとギョムはずっと目をそらしていた問題を抱えていて、それを乗り越えてこそのこの恋愛なので、あえてそのような漫画の一コマのようなフワフワした描き方だったのかなと思います。
とはいえ、個人的にはこのムビとギョムの恋愛模様を軸に据えるのではなく、もっとメインのキャラクター5人がそれぞれ一体どのように考えていたのか?という内面を知りたかった。
単なる日記的なナレーションだけで済まさず、欲を言うとしっかり描いて欲しかったかなあと不満に思えました。(ナレーションで語るシーンがとても多かったです)
いずれにしても、どこか現実味がなくこちら側に響いてこないというか、物語の深みがないのは否めないかなと感じました。
題材はとても興味深かったのですが…残念。
ちなみに始まって早々に、チェ・ウシクさんが主演だった『その年、私たちは』にギョムというキャラとその過去作のキャラが性格的にもスタイリング的にも全てが似ているので妙な気分になったのですが、何と今作と脚本家が同じ方だと知って、色々な意味で驚きました。
ゆるいネタバレありの感想
Netflix Korea インスタグラムより
映画オタクのギョム。
兄と自分、たった2人で暮らしてきたギョムにとって、映画はいつも側で勇気づけてくれる友達であり話を聞いてくれるような家族でもありました。
そんな彼は、俳優になるオーディションの日に出会ったムビに一目惚れをします。
彼女は映画業界で働くアシスタントような仕事をしていますが、将来的には映画監督を目指す女性。
後日、映画撮影のセットでムビに再会したギョムは彼女に必死に猛アピール。当初そんな彼の行動を迷惑がっていたムビでしたが、次第にギョムのことが気になり始めます。
映画好きなギョムは、彼女の名前がムビ(ムービー)なのも運命を感じた様子。
ムビも自分の気持ちを認めて、2人は晴れて恋人に…?
しかしその直前、突然ギョムは連絡も無しにムビとは音信不通に。
ムビは状況もわからずに、始まったばかりだと信じていた彼との関係性は宙ぶらりんのまま、ひとり取り残されてしまうのでした。
再会
そして5年後。
2人は突然再会。映画監督と映画評論家として。ムビはギョムの”変わらない”態度に怒り心頭。
二度と関わりたくないと告げたりしますが、偶然が重なりまくり、運命のように2人は何度も顔を合わせることに。ムビと母が住む向いの家にまでギョムが引っ越して来た時は、なかなかだなとは思いましたが…。
またちょうど新しい映画の計画を進行させていたムビは、その脚本をギョムの友達ジュア、そして映画音楽をジュアの元カレでギョムの親友でもあるシジュンに頼むなど、サークルの輪が繋がっていきます。
しかしギョムとムビ、両者にとってネックになってくるのが5年前のこと。
一体どうしてギョムはムビの元から去らなければならなかったのか?
ムビは謝罪を要求したりするものの、彼の暮らしを間近で見ていると何か感じた様子。
2人の傷
飄々として呑気に明るく生きているように見えるギョムですが、彼は心のうちを上手く吐き出せずにいるタイプの人間でした。
そして、それはまたギョムの兄ジュンももしかしたら同じだったのかもしれません。
年齢の離れた弟を1人で必死に「守って」きた兄ジュン、彼はいつのまにか自分自身を見失っていたこともあったのでしょう。
そんな兄の暗い闇を、事故によって目の当たりにしたギョムは、恋愛というフワフワした感情が入り込むスペースはもう彼の心になくなったのようでした。
彼は目の前の兄に向き合うことにしたのでした。それがこの5年間の話です。
一方のムビ。
彼女は映画業界で忙しく働いていた父が、幼いころから自分に見向きもしなかったという深い恨みのようなものが未だに消えていません。もう父はとっくに亡くなってしまったというのに。
しかし反面、自分の意地の強さとワガママで父を事故に遭わせてしまったかもしれない、という深い罪悪感も同時に背負っていたムビ。
ムビとギョム、2人は愛する家族、父と兄に対して、自分の存在に対するうしろめたさと執着のようなものを抱いていたのかもしれません。
気になった点
表面的なことが多すぎる
このドラマですが、割とクリアになってない”背景”が根本的に多すぎるのが気になりました。
空気感や行間を読ませるようなドラマは数々ありますが、それはキャラの”人となり”を十分提示できてからこそ、伝わる空気感であると思います。
そのキャラを知る機会が十分与えられていなかった点こそ、今作の大きな不満点だなと個人的には感じました。
・音信普通問題
ギョムとムビが恋人目前でジュンの事故のため、ギョムが5年間も音信不通…というスタート地点。
このまず特大の疑問として「何故連絡できなかったのか?」という点。
というのも、ギョムはコミュ力抜群でどこか能天気でつかみどころのない奴…だけど「何か」ありそうだ、という序盤です。
突然関係性をシャットダウンしてしまうという、彼の行動について。ムビに連絡しようとして躊躇している短いシーンはありましたが、その後は?
兄と向き合って過ごす時間が必要だったというのは、後半我々の理解がやっと追いつく部分ですが、ムビに対しても視聴者に対しても彼の心情と行動/キャラが納得しにくかった。
・路線変更の謎
ギョムが俳優を目指していたところから、映画評論に路線変更した理由。
兄の看病のために現場に長時間出る俳優業を控えたのかなと推測しますが、最初からキャラ的にも俳優を目指さずに批評家でもよかったような。
また彼がどれぐらい成功していたのかいまいち謎でしたが、いつも仕立ての良さそうなルメール系の衣服を着用しているギョムが、駆け出し俳優→映画評論家としてたった5年で(金銭的にも苦しい幼少期を経て)現状かなり成功しているのが少々ピンときませんでした。
・映画監督ムビ
ムビが一体どんなポリシーでどのような熱意を持って映画作品を監督として作りたかったのか、よくわかりませんでした。
彼女が映画監督を目指したの理由は、ある意味父に対するアンチテーゼ的な態度であったのは語られます。
が、そもそも彼女から映画に対する情熱や彼女自身のポリシーが全く伝わって来なかったです。
映画監督は全てにおいてそんなドライな感情で進めることができるような簡単な仕事ではないだろう…と、素人的にも観ていて疑問に思えました。
今作、職業の描き方も表面的ではなかったでしょうか。
・ギョムと兄との関係
今作で最も見ごたえがあった部分は、ウシクさんとジェウクさん演じる兄弟関係でした。
孤独で閉じた関係に置かれたこの2人、一体どのような思いで2人は過ごしてきたのか。
後半、それなりに今作としては明らかになりつつも、兄の気持ちはそれほど明らかになりません。
メインキャラではないからという理由なのかもしれませんが、今作はどのキャラについても大して深堀りされていないので、関係ないのかもしれませんが…。
彼が弟を親のように守ろうとしていたその先に何を思ったのか、ずっと敢えて「無視していたジュンという自分自身」について一体何を感じていたのか、何を犠牲にして弟との暮らしを選択し、弟に何を望んでいたのだろうか…?
そして、彼は死をどの時点で意識したのか?どれだけ孤独だったのだろうか…。
そんな興味深さをこのキャラについて強く持ちましたが、大して語られることはありませんでした。
演じるジェウクさんとウシクさんが大変良かったので、とにかくめちゃくちゃ勿体ないなあと思いました。
・ギョムを好きになった理由
序盤にギョムがほぼ付きまとい状態でムビに接近していましたが、正直何となく不気味さすら感じました。というか、ギョム(最早ウシクさんが演じているから)だからセーフというか…。
そんな状態でムビはどの時点でギョムのことを好きになったのか、いまいちよくわかりませんでした。
今作ですが、そもそもギョムとムビの気持ちの重なり合いのような丁寧な描き方が非常に少なく思えました。
単に一目惚れ+偶然が連発して好きになっちゃった!という感が強すぎたのもあってか、個人的にはこのムビとギョムの恋愛模様はペラペラであまり楽しめませんでした。
反対にシジュン&ジュアは比較的現実的なシチュエーションだったので、対比になっているのか何なのか、妙に謎が残りました。
ということで、俳優陣と設定などはとても良さそうで、かなり期待をして視聴しましたが、率直なところちょっと残念な感じがしたドラマでした。
ただ決してつまらないドラマではないと思います。
もちろん良い要素も多々ありましたが、どこか現実味がない(ドラマなのですが)というか、感情移入しそうでできない、重そうに見えて軽いドラマだったなと私は感じました。
気になった方はぜひ視聴してみてください。