韓国ドラマ トランク (感想)

Netflix

おすすめ度:75%
シャンデリア度:100%
湖度:100%
原題:트렁크 / The Trunk (全8話)

ネットフリックス 韓ドラ トランク 感想レビュー考察ネタバレあらすじ

元妻から契約結婚を紹介された男、過去にとらわれた女性…複雑な線で結ばれた4人の関係とは。2024年のサスペンス・ロマンスドラマ。

あらすじ・キャスト

結婚に暗い過去の痛みがあるインジ(ソ・ヒョンジンさん)は謎の結婚仲介サービスを通じて、ジョンウォン(コン・ユさん)と1年の契約結婚をすることに。
しかしそこには、ジョンウォンと元妻ソヨン(チョン・ユンハさん)の複雑な愛憎関係が背後にあったのだった。
一方のインジは、ストーカーに悩まされていて…。

感想

私は好きな部類の作品でしたが、ただちょっと全体的に気取りすぎというか、思わせぶりでスタイリッシュさを狙いすぎな部分が良い意味でも悪い意味でも目立つ作品だった印象です。
トーンは暗いですがストーリー自体は興味深かったですし、とっても美しい流れのシーンもあって、私はつまらないとは全く思わずに結構集中して飽きずに視聴しました。
ただ後半になるほど、”明らか”にされるものがどんどん弱くなるというか、スリラーのせいでドラマの根本的なポイントがブレたような気もしないでもないような…。
何となく実験的な手法でアート系映像作品と、泥臭い愛憎ドラマの融合を狙っているような作品とも思えました。

胸の奥に”ほの暗い過去”を持つ4人、2組の夫婦として愛憎が交差して描かれる今作。
時系列が頻繁に分断されて語られる手法で、そう多くない登場人物の過去と現在が混在しつつ次第に明らかにされます。
人物について深く描くタイプの作風でないのは承知ですが、キャラの過去が想像以上に明かされません。
そのためか、その秘密主義さが仇となって、視聴していて普通に登場人物についての関心がいつしか消えていくことに結果なりました。
登場人物については、勝手に下記で考察してみましたが、全員”おかしくて”興味深かったです。
それ故に、本当にもっと「ちゃんと」知りたかったなと私は思えました。
彼らの過去に興味を持つ→明かされる、というその通常のドラマや映画によくあるプロセスすらも何だか妙に大袈裟な演出になっていたり、期待していた半分ぐらいしか明かされていないということが重なったのもあって、失礼なががちょっと鼻につくというか何というか…。
というのも、そもそも正直「ソレってそれ程に秘密にするような話?」というのも頻繁にありましたし。

韓国ドラマ ネトフリ トランク考察レビュー感想

ただ見ていて美しいドラマだったのは間違いありません。
実際OST、衣装、セット、ロケーションなど、とにかく全てがミニマムでかなり計算されて撮影されているのがわかりましたし、完璧に近いほど画面は美しかったです。
ですがそのせいで、肝心のキャラそのものがシーンをただ彩るだけのモデル化しているというか、まるでミュージックビデオのように見えました。何だかペラペラしたキャラ設定というか。

この4人の夫婦関係に加えて、並列して主人公に付きまとうストーカーの存在によるスリラーパートも大きく語られますが、このスリラーについて私はメインのお話にどうも上手く絡まっていないように強く思えてしまいました。
特に終盤はこのスリラーが山場になってくるわけですが、結末も目的もかなり拍子抜けする流れのように個人的には思えましたし。
素人の感想ですが、このストーカーの部分がなくっても物語の本筋に対して大して影響がなかったように感じました。

とはいえ今作ではロマンティックなシーンも思ったよりずっとあって、私はどちらかというと好きなタイプの作品ではあったのですが…。
ただ、勿体ぶった演出が多過ぎたので、最後の頃には何だかこのドラマ自体のコンセプトに全8話としては少々萎えてしまった、というのが率直な気持ちです。
かなり勿体無い感じもしました。

演じる俳優さんたちですが、コン・ユさんとソ・ヒョンジンさんの今作でのキャスティングは本当に良かったと素人ながらに思いました。
コン・ユ先輩のニュアンスのある色気が爆発しており、また今回はコン・ユさんは色々な涙を浮かべるようなシーンが多かったキャラですが、その表情の時が本当に何とも言えない”美しさ”と”強さ”のようなものが出ていて、個人的にはとても印象に残りました。
ヒョンジンさんは、クールさが際立つような役柄で今までもそのような役柄をされていたことがあったと思いますが、より冷ややかさが強くありました。彼女もまた涙を浮かべるシーンも多かったのですが、際立って美しかったです。
今作は全体的にどこか無機質で温度感がない演出だったので、涙のシーンに強く人としての感情の温かみのような部分を見ていて(私の中で)印象に残ったのかもしれません…。

ちなみに序盤1,2話で露骨な描写の性的シーンがありますのでご注意ください。

ゆるいネタバレありの感想と考察

Netflix Koreaインスタグラムより

湖で発見された、世界に3つしかない「トランク」と死体。
この事件と関係あると思われる、2組の”複雑な関係”を持つ夫婦。しかし決して犯人探しやトランクの中身が、このドラマの本題ではありません。
トランクの中身はあくまでも登場人物が隠したかった心の奥底のもの、と私は解釈しました。
登場人物やトランクなど、気になった事柄について勝手で個人的な考察と感想を書いてみます。

ジョンウォン
父が母を監視し狂わせ命を絶つ家庭環境で育ち、強いトラウマを抱えているジョンウォン。
母の死を状況的に加担したジョンウォンに対し、手と傘を差し伸べたことがきっかけで彼の初恋となったソヨン。
そんな彼女に”すがって”長年彼は生きていたわけですが、結婚してソヨンが妊娠したことで2人の関係はさらに歪なものに。
子供を望んでいたジョンウォン、子供が欲しくなかった元妻ソヨン…。
ジョンウォンの女性に対する依存度の高い態度は、明らかに母へのトラウマや家族関係から来ているもののようですが、彼には「そこ」から飛びだす術を考えたこともなかったようです。
今作ではどのキャラクターもおかしい訳ですが、元妻とジョンウォンの関係が、憎んでいたジョンウォンの両親の関係と類似していたのは皮肉なことです。
この主従のような関係性は、彼が取り憑かれていたように離れられなかった”家”の中央にある螺旋階段とシャンデリア、天窓の構図のように、連続性のある形に象徴されていました。
もしかしたらソヨンとの間に子が生まれていたら、この関係が次の世代にも続いていたかもしれないという暗い未来を可能性を示唆したようにも思えました。
彼はソヨンとの子供を、自分弱さを克服するかもしれない希望の光として切望していました。
しかし、そんな叶えられなかった希望をトランクの中に封印し、絶望の暗い中を日々彷徨っていたのでしょう。
そして彼が忘れていた”何か”を持っていたインジと、偶然か必然か再び予想外の状況で顔をあわせるのでした。

ソヨン
精神的に非力なジョンウォンを卑劣に長年の間コントロールしていたのは、ソヨンでした。
ソヨンは流産後にわざと事故に遭っていましたが、ジョンウォンにはわざと事故に遭って子供を死なせた、とバレたことになっていました。ですが、本来は二重の嘘をついていた訳です。
彼女が流産を隠して事故に遭ったことについて、彼女はジョンウォンに「それほど子供を持つことが嫌だった”のに”」と彼に知らしめたかったのだろうと思います。
彼に十字架を背負わせ、ソヨンに対して申し訳ないという罪悪感をずっと抱かせるはずだと。
ですが、逆にこの行動がジョンウォンを絶望させ、嫌悪感にも似たような恐怖と深い溝を作ってしまったのです。
ソヨンはそれに気づいて、ジョンウォンが興味を抱いていたインジを当て馬として契約結婚させましたが、彼はもうソヨンの元には戻りません。
ソヨンはなぜ子供を持つことをそれほど嫌ったのか(トラウマがあるのだと思います)、自殺したインジの先輩とソヨンの間で何があったのか?詳細は語られません。知りたい…。

インジ
婚約者が他の男性と関係を持っていることが自分の母親によって世間に公表されて以来、夫と音信不通になってしまったインジ。
自分をまるで罰するようにこの仕事を始めた彼女、消えてしまった婚約者の家にまるで亡霊のように心が囚われているようです。
ただ、終盤に謎が少し明らかにされていくと、インジに対して持っていた私の中の印象が大きく変わっていくのがわかりました。
彼女は彼がバイセクシャルであることは確実に知っていたはずです。(インジが彼を迎えにいったラウンジのような場所は、明らかに男性同士の出会いの場のようでした)
婚約者はインジとの結婚に前向きでなかったように見えましたが、そんな彼を自分との結婚に半ば強引に引き摺り出したのは、恐らくインジだったのでしょう。
私は、彼女の中でそれに対する罪悪感は常にあったのではと思えました。
また、実際に婚約者の写真を提供したのはストーカーだと知りながらも、母親が婚約者を世間的に殺した、と常に母を責める発言をしていたのは何故か?
恐らくインジは母親との間に結婚について何か確執があったように考察できますが、これについても真相は不明。
終盤、ジョンウォンと互いに気持ちが通じ合っているのに、なぜまた彼を拒絶して距離を置くのか…、と強く疑問に思えました。
ただ考えていると、ジョンウォンのトラウマ克服云々を待っていたということもあると思いますが、もしかしたらインジもソヨンのように、婚約者をかつて心理的にコントロールしていたような可能性もあるかもしれないな、と思えました。
そのような自分自身を、彼女は”契約書”と共にトランクに封印したのではないでしょうか。
だから再びジョンウォンとの関係を築くのには、それなりの時間が必要だったのだと思います。
ちなみに彼女が”仕事”をしている時は、ほぼいつも白い衣服を着ているのも面白いなと思えました。
最初にソヨン夫婦とジョンウォン宅で食事を取った際、ソヨンと夫は黒い服、インジは白、そしてジョンウォンはグレーを着ているのは彼らの関係性が表現されていてとても面白いなと思えました。

ストーカー
ストーカーことテソン。演技は文句なく怖くて素晴らしかったのですが、後半になればなるほどこのキャラが必要だったのかどうか私はわかりませんでした。
最初にテソンが「インジを崇拝している」と発言した時、個人的に彼への興味がブチ上がったのですが、その後崇拝している態度がほとんど見られず(?)ただの結婚仲介業NM社の契約書が欲しい人になっていて無言になりました。インジに彼が固執する背景描写が弱すぎます。
これでは単なるスリラー要員になってしまっていたので、こうなるとNM社がどれだけ凄い闇組織なのか、くらい語ってくれないと説得力もないなと不満でした。

ソヨン夫ジオ
テソンと同様、ジオも最終的な犯人となるには提示された動機が弱すぎたように思えました。
キーパーとしての過去の己の行動を常に恥じていたトラウマがあったとしても、なんだかなあ…というか。
テソンと同じく、このNM社に対する背景がなさすぎて「そうなの…」というか、単なる敵に回せない組織なんだろうなという漫画的な設定しか感じ取れなかったので、その点は少々チープさを感じました。
ただ最後にソヨンがずっと着用していたスクエア型のサファイアのネックレスを外し、ジオのプレゼントのハートのネックレスを身に付けていたのは2人の未来を暗示していて、彼の気持ちが報われたようでよかったです。
とはいえジオが一体どれだけソヨンのことを”本気で”愛していたのか、正直いまいち伝わりませんでしたが…。
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ということで、何かと語られない部分が多くて、それが非常に良いように作品に効いているなと思えた時と、もっと詳細を教えてくれよ!!と単に不満に思うことも多く、なかなか不思議なドラマではありました。
ただ、私は総合的には興味深く思えて、色々とイマジネーションが広がるというか好きなタイプの作品ではありました。
ただ述べた通り、ちょっと気取った演出がこのドラマそのものに共感しにくいものにしているようで残念でした。(共感できるキャラかどうかは別として、そもそもキャラを理解しようと思えにくいというか)
俳優さんの演技は本当に素晴らしく、クールな作品ではありますので、気になった方はぜひチェックしてみてはいかがかなあと思います。

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