おすすめ度:80%
3人度:100%
シューズ度:100%
原題:Mr. 플랑크톤 / Mr. Plankton (全10話)
余命3か月の男性が、元彼女を結婚式の日にさらって父親探しの旅に…?2024年のヒューマン系ラブコメ。
あらすじ・キャスト
根無し草のような生活をしているヘジョ(ウ・ドファンさん)は、脳の病気で余命宣告されてしまう。
そんな頃、偶然に再会した元恋人のジェミ(イ・ユミさん)の近況を知ったヘジョは、彼女を無理矢理連れ出し、自分の父親捜しに向かう。
しかし、ジェミの婚約者フン(オ・ジョンセさん)らがそんな2人を追いかけるが…。
感想
前半ピタゴラスイッチ的なクスっと笑えるコメディとしっかり泣かせてくるシーンが上手くブレンドされていて、良いドラマだったと思いました。
前半はラブコメ風味が強くドタバタが多いですが、中盤からヒューマンドラマが強めになってくる構成。
ドラマの主張となる軸は、血の繋がりと愛についてがテーマで、複雑でなくわかりやすいものになっています。
血縁に振り回された大人でもあり子供でもある男女3名が、"走り続けて”その「縁」を再び見つけ、人との縁とは何かを理解していきます。
良くあるネタの話ではありますが、ウィットがありつつも涙が出るシーンも多かったのですが、あまり押しつけがましくなくて重すぎず、今ちょうど良い表現の仕方だなと感じました。
印象に残ったのは、画面の美しさもありました。
少しレトロっぽく映像処理しているシーンとOSTの使い方からも、ロードムービーを意識しているのは間違いないと思います。
シネマとグラフィーとして映像処理も本当に美しくて、四季や韓国の景色もふんだんに使われていて観ていて綺麗で楽しかった。
作品の長さですが全10話でしたが、個人的には全8話にするか、もしくは全12話でも良かったような気もしました。
もう少し突っ込んで深堀して長く描いても良かった気もするし、逆に終盤はやや繰り返しのような内容とも思えたのでカットして8話にしても…とは思えはしました。
私個人の感想としては、中盤までは素晴らしい流れだなと思っていたのですが、終盤になるにつれ正直繰り返しになっているように感じ、ややダレた部分はありはしました。
ただ今作はどの出演されている役者さんも見せ場の良いシーンがふんだんに用意されていて、細かいシーンでかなり胸にグッと来る箇所が大変多かったので、その部分の満足度は半端なかったです。
特にオ・ジョンセさんの今作での演技は目を見張りました。
私ごときが今更コメントする必要もないですが、本当に本当に演技が上手い方だなと思った次第です。
ジョンセさんが演じるフンという役が大変味のある良い役で、フンが涙するシーンも多いのですが、その涙のバリエーションというか、泣く演技の幅の強弱の付け方は是非観てもらいたいです。
そして主演のウ・ドファンさんですが、作中で「退廃美」というネタっぽい字幕セリフもありましたが、そんなセクシーさが出たスタイリングと演出でご本人の雰囲気に合っていて良かったです。
ヘジョという愛に飢えたというか、人の繋がりを欲している男性、しかし一方でハチャメチャに自分勝手で偉そうなところもあって…という、あまり実生活では近づきたくないキケンな男性役がピッタリでした。
観やすい、良質なドラマだと思うので気になる方はチェックしてみて欲しいです。
観て損した!と思われにくいドラマだと思います。
ゆるいネタバレありの感想
Netflix Koreaインスタグラムより
ヘジョは取り壊しが決まっているひっそりとしたビルの1室で、パシリ(キム・ミンソクさん)と共に胡散臭い便利屋をして暮らしています。
今回はヤクザのボスと結婚する女性をさらって欲しいという変わった依頼。
楽しそうだというヘジョの基準を満たしたこの件を派手に実行するものの、ヘジョは途中で事故に遭ってしまうことに。
病院に運び込まれますが、脳に異常が見つかり余命3か月の宣告されてしまうヘジョ。
一方、歴史ある家に嫁ぐことが決まっているジェミは、産婦人科で早期閉経を告げられ、大ショックを受けます。
だってジェミは子供を今すぐにでも持つ"必要があった”のですから。
そもそ結婚相手のフンの恐ろしい母親とその家族から、結婚を認めさせたのも「今、妊娠している」というウソがあったからこそ。
ジェミは閉経したというショックと、この先もあの家族にウソをついてフンと結婚できるのかという未来を考えると絶望でパニックになるのでした。
そんな状況に置かれたジェミを偶然見かけるヘジョ。
実はこの2人、かつて恋人だったのです。
ヘジョの過去
余命宣告されたヘジョは、ある考えが頭に浮かびます。
「本当の父親は誰か?」
幸せな家庭で育ったヘジョ…しかし、そんな暮らしも8歳で終わりを告げます。
彼は父の”本当の子供”ではなかった、それが家庭内で判明したからです。
実はヘジョは父の凍結された精子から誕生したはずの子でしたが、病院内で精子の取り違えがあったのです。
それを知った母と父は、急速にヘジョへの愛情が消えていってしまったようでした。家族からは笑顔は消え失せ、母親はその後”事故”で亡くなってしまいます。
ヘジョは冷え切った父と暮らす家から出て、10代で野良犬のように生きることに。
暗い思い出を家族に持つヘジョは、死ぬ前に真の自分の父を確認したくなったようです。
父親さがし
ヘジョは父親候補5人の情報を得て、結婚式当日のジェミを無理矢理連れ出します。
拉致同然の連れ出しに、ジェミは怒り狂いそして婚約者のフンは彼女のことが心配で卒倒する勢い。しかしヘジョは動じることはありません。
途中ジェミは脱走を試みたり、フンに連絡を取ろうとしつつも、彼女自身も「戻る場所がもう無いのではないか」という不安に襲われます。
実はジェミも親がいない女性です。
彼女は家族を欲しながらも、そして誰よりも自分の家族を作りたかったにも関わらず、自分を愛してくれるフンとの結婚もかなわないのかもしれない。
また幸せが逃げて行く…ジェミはヘジョの父親捜しに嫌々ながらも共に行動しながら、どうにもならない窮地から逃げるきっかけをくれたヘジョの存在に少しホッとしたのかもしれません。
一方のヘジョもまた、余命宣告された不幸な自分と同じタイミングで泣いていた元恋人ジェミの存在が何か同志のように思えたようにも見えました。
もちろんヘジョは別れてもずっと彼女のことが好きだったのでしょうが…。
良くも悪くも気になった点
・「子供たち」
今作で最も良かったのが、メインの出演者はほとんどが大人でしたが、彼らもまた「子供」という描写が常にあったところです。
キム・ヘスクさん演じるフンの母親でさえ、”親の重圧”に苦しんでいたとこぼすシーンもありました。
みんなが誰かの子供で、「本来受けるべきはずの」無償の愛情をどこか欲しているような、そんな”それぞれの孤独”の描写が見え隠れするシーンが多く、何とも上手いなと思いました。
・ヘジョの最期
1話からヘジョが倒れているシーンを入れてあったのは、親切だったなと思いました。
スタート地点から「このように終わる」のだと大筋で予告されているので、ショック度軽減という意味で良かったです。
また彼の望む最後が、彼の思い描いていたもの以上に"愛”に溢れていたと描かれたのも良かった。
・ヘジョの実の母の死
彼の母の死は車の事故死と描かれていましたが、色々な意味にも取れるようになっていたのが、良い意味でも悪い意味でも興味深いなと思えました。
ヘジョは何となく脳の疾患を父からの遺伝と思って動いていた様子でしたが、母親の可能性も普通にあると思います。
母親は薬を途中から服用していた描写がありましたが、特に何の薬かは不明でしたので…。
・ヘジョのジェミへの態度
キャラなのでしょうがないというか、理解はできたのですが、何となくヘジョはジェミを心理的に懐柔しているというか…。
そのようなある種モラハラ的な雰囲気がある関係性が私はちょっと気になりました。彼女の弱さを男性側が利用しているというか。
2人が愛し合っているのはとても伝わったのですが、何となくヘジョのジェミへの態度が(たまに)気に入らねえ…と個人的に感じた次第です。
・ヘジョさん脱ぎすぎ
サービスなのか何なのかわかりませんが、そこで下着一枚にならなくても良いのでは…というぐらい、イ・ドファンさんの半裸シーンが妙に多かったように思えました。
下着が全部同じような色なのも少々気になりましたが…。
途中から慣れてしまい完全にアスリートを見るような感じになっていたので、その効力が消えかけていたのでは…と、個人的になんとなく半裸カードを使いすぎてもったいなく(?)思えました。
・理由は何も明かされない
今作でネガティブさとして取り上げるとしたら、「何も結局わからない」という点かもしれません。(上に上げたヘジョ母の件もそうですが)
なぜヘジョとジェミは別れたのか?
なぜヘジョ父はいきなり息子に冷たくしたのか?
ヘジョとボンスクはどれぐらいの関係なのか?
など…
全て観ていて「何となく」予想できるものにはなっていますが、いずれもハッキリとは語られませんので、最後まで観ても何も明かされないと思われる方もおられるかもしれません。
--
ということで、心を揺さぶられるような強さはありませんでしたが、総合的には良いドラマだったなと思いました。
観やすかったですし、話も分かりやすかったので、ドラマとしてはおすすめです。
若干前半のヤクザ騒動などで萎える方もいるかもしれませんが、もう少し視聴を続けて下さればと思います。
ただ私自身の感想としては、むしろ前半部分の方が今作の良さが全面に出ていたような気がします。
映像の編集もとても良かったので、是非視聴してみて下さればと思います。